朝 7 時に起きて、9 時に家を出る。自転車で 20 分。
学校のリズムに合わせて、一日が動き出す。
並木福山に入ってから、ようやくその流れを取り戻せた気がする。
昔から絵を描くのが好きだった。
タブレットを開いて、アプリで好きな人物やキャラクターを模写する。
ひとりで描く時間も好きだけど、今はオンラインで知り合った友人とスマホをつないで
雑談しながら絵を描くことが増えた。
彼女とは、考えすぎてしまう気質が似ていて自然と気が合う。
自分の弱点がきっかけでわかり合える相手ができたことが、素直に嬉しい。
中学生の頃、先生にも友だちにも気を使いすぎていた私は、
家に帰るとまったく力が出なかった。
絵を描きたくても気力が湧かない。
机の前に座っても、手が動かない。
電源が落ちたように、何もせず夜が来て眠りにつく毎日。
やがて学校を休みがちになり、たまに登校しては消耗する。その繰り返しだった。
高校進学を考えたとき、全日制はムリだとすぐに思った。
そして、通信制の高校を探す中で出会ったのが並木福山だった。
オープンキャンパスで見た木の机のぬくもりと、黒板の匂いが決め手になった。
次こそは、中学時代にできなかった学校行事を楽しみたいな。
そんな思いで、久しぶりにワクワクしたのを覚えている。
並木福山の先生は、緊張しやすい私をいつも気にかけてくれた。
授業も基礎から丁寧に教えてくれる。わからないところも質問しやすい。
中学のとき置き去りにしていた「勉強したい」という気持ちを、
私は少しずつ取り戻していった。
学校行事にも積極的に参加するようになった。
文化祭では、クラスの模擬店でフライドポテト屋を企画し、
友だちと看板を描き、当日は店員として声を張った。
陸上部では全国大会にも出場し、
10 日間のサイパン研修では現地の子どもたちと交流した。
お母さんも驚いていたけれど、きっと一番驚いていたのは私自身だと思う。
みんなで協力してひとつのものを作ったり、体を動かしたり、
新しいことに挑戦する——。
些細なことのようだけど、これが「私がやりたかったこと」なんだ。
3 年になってからは、週 2 日に切り替えた。
もし全日制だったら“休みがちな子”だと思われていたのかな?
自分のことを責めていたかもしれないな。でも、
並木福山は“自分のペースを選ぶ”ことができる学校だ。
休むことは逃げることじゃない。自分を守る選択。
そう思えることは、自分にとってとても大きなこと。
私は自分の意思でペースを選び、高校生を続けている。
それだけで、少し誇らしい気持ちになれる。
今は愛媛大学の法文学部を目指して勉強中。
とはいえ、目標を立てるのが少し苦手だ。
ゴールがあることがプレッシャーになって苦しくなる。
それでも机に向かう自分がいる。
絵を描きたいな。勉強しないといけないな。
そんなふうに揺れながら、それでも前を向いている。
何より帰宅してからも「電源が切れていない」ことは、
私にとって大きな変化だ。
だからこそ、中三の私に今の私が声をかけるなら、こう言うだろう。
——よくがんばったね。今日もちゃんと「続き」があるよ、と。
カーテンの隙間から光が差し込む朝日のように。静かに、確かに。
朝 7 時に起きて、9 時に家を出る。

